操体法で「快方向」に動くのはなぜ?「誘導操作」のコツとは?(生理学的考察)

操体法のコツは「スーッと動けばよい。気持ちよくやること。」と言われています。何故でしょう?

解剖学博士・黒澤一弘先生(つむぐ指圧治療室代表)に操体法を体験してもらった上で、生理学的観点から考察をしていただきました。
黒澤一弘先生

筋肉は引き伸ばされると収縮するという性質を持っています。これを「伸張反射(stretch reflex)」といいます。
伸張反射は「筋紡錘」という筋肉の長さを測るセンサーが反応することにより起こります。
これは姿勢保持や筋の損傷を防ぐ役割があります。
伸張反射
カラダに何かしらの違和感があると、痛みを発している筋は持続的に収縮し「短縮した状態」にあることが多く、筋紡錘の感度を調節するγ運動ニューロンも興奮している状態になっています。つまり「引き伸ばされる刺激」に敏感になっているわけです。

「違和感がある方向」ということは、その問題となっている筋が引き伸ばされる動きであることが多いわけです。その過敏となった筋は、伸張反射による「防御的反応」を引き起こします。

操体法では「心地よいと感じる方向(快方向)」へと動きます。
これは問題のある筋が緩む方向(緩みやすい方向)となります。

筋肉には筋紡錘の他に「ゴルジ腱器官」という筋の収縮力(張力)を感知するセンサーが腱の部分にあります。
これは腱が引き伸ばされることにより、その情報を脊髄に伝え、その筋を弛緩させる反応を引き起こします(Ib抑制)。

このゴルジ腱器官による弛緩作用を促す方法は大きくわけて2つあります。
ひとつはストレッチ。もうひとつはその筋の収縮に対して「抵抗」を加えることにより、その筋の収縮をより引き出してあげることです。

操体法では、被験者(患者)に快方向(問筋が緩む方向)へと動いてもらい、足先から頭頸部までの連動する動きの中で、施術者は抵抗(誘導操作)を加えます。
膝たおし
この誘導操作により、問題のある筋への筋紡錘への刺激を減らしつつ、ゴルジ腱器官を効率的に刺激し、弛緩を促すことができます。そして張力を発揮した状態から「ストン」と脱力することにより、より弛緩作用を増すことができます。

また誘導操作は、硬くなった筋を柔らかくするだけでなく、神経系が促通され、より働きが良くなることが知られています(神経筋促通作用)。これによりバランスが整うだけでなく、筋肉自体の働きが良くなります。

これらの作用を、安全に効率良く引き出すことができるのが操体法の生理学的な役割といえます。


操体法は、指圧をはじめ様々な手技療法や鍼灸などとも組み合わせることが可能ですが、誘導操作のテクニックは書籍や動画からの情報だけでは習得が難しい技法と思います。ぜひ今後の操体法セミナーで実際に体験してもらえればと思います。

この記事の筆者

鈴木健介(アミケン) / Kensuke Suzuki

1977年 大阪生まれ。編集者 & セラピストのパラレルキャリア。
厚生労働大臣認定 あん摩マッサージ指圧師 / 合同会社GX代表 / アミケン編集塾 塾長 / PRSJ認定PRプランナー / 日本指圧専門学校 61期卒 / 趣味:阿波おどり
操体法は 私の曾祖父、橋本敬三が考案した健康法です。
SOTAI is a movement therapy that was invented in Japan to heal your body naturally.

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